PO→MIGO→MIROを実機で通す|MM/FI購買サイクルの仕訳を確認

今回やること

購買発注(Purchase Order)を作成したあと、入庫(Goods Receipt)と請求書受領(Invoice Receipt)を通すと、MMの物流伝票とFIの会計伝票がどのようにつながるのか。画面操作だけを追っていると、入出庫伝票、請求書伝票、会計伝票、入庫/請求仮勘定(GR/IR Clearing Account)の関係が分かりにくいところです。

今回は同じ購買発注4500002273を使い、MIGOの101入庫からMIROの請求書受領までを実機で通しました。生成された伝票と仕訳、購買発注履歴、GR/IR勘定の明細まで追い、購買サイクル全体で何が起きたかを確認します。

支払処理は対象外です。MIRO後に計上された仕入先債務の支払は、ここでは実施しません。

検証情報

SAP製品・Version SAP S/4HANA 2025 On-Premise
UI SAP GUI for HTML
検証日 2026-08-16
対象領域 MM / FI
主なT-code ME21N / MIGO / MIRO / FBL3N
会社コード Z091
通貨 JPY
検証レベル PO→入庫→請求書受領のE2E実機検証

PO 4500002273の条件を確認する

今回の起点は、購買発注4500002273の明細10です。後続のMIGOとMIROは、この明細を参照して実行しました。

項目 今回の実機値
購買発注 4500002273
明細 10
仕入先 1002929
品目 2
数量 10 EA
単価 1,000 JPY / EA
正味金額 10,000 JPY
プラント Z091
税コード V2
請求書受領 ON
入庫基準請求書照合 OFF

今回のPOでは、入庫基準請求書照合(GR-Based Invoice Verification)はOFFでした。そのため、本記事は入庫基準請求書照合の機能そのものを検証するものではなく、POを参照して101入庫を行い、その後に請求書受領を転記した実機結果を追うものです。

購買発注4500002273の請求書タブで請求書受領と税コードV2を表示したSAP画面
図1:PO 4500002273の請求書条件。請求書受領が有効で、税コードV2を確認

MIGOで101入庫を転記する

SAP Helpでは、購買発注は購買だけでなく在庫管理や請求書照合でも参照される追跡対象であり、購買発注に対する入庫ではPOを参照して処理することが説明されています。今回もMIGOでPO 4500002273を参照し、移動タイプ101で入庫しました。SAP Help:Goods Receipts for Purchase Orders

転記後、入出庫伝票(Material Document)5000003021が生成されました。数量は10 EA、プラントはZ091、保管場所は0001です。

同時にFI会計伝票5000000000が生成され、今回の環境では次の仕訳になりました。

借貸 勘定 金額
借方 125100 原材料 - 主要材料 10,000 JPY
貸方 461200 入庫/請求-仮勘定外注 10,000 JPY

この時点では、在庫側へ10,000円が計上され、相手勘定としてGR/IRへ10,000円が計上されています。内部処理キーはBSX / WRXでした。

MIGOの101入庫後の在庫数量、入出庫伝票、FI会計伝票、品目元帳の伝票番号を個別に追いたい場合は、MIGO 101入庫の実機検証で確認できます。

MIGOで購買発注を参照して101入庫を転記し入出庫伝票5000003021が生成されたSAP画面
図2:MIGOで101入庫を転記し、入出庫伝票5000003021が生成された画面

MIROで請求書受領を転記する

次にMIROで請求書受領を行いました。SAP Helpでは、請求書照合(Invoice Verification)は一般に資材調達プロセスの終盤で行われ、入庫と請求書受領はGR/IR勘定を介して管理されると説明されています。SAP Help:Invoices for Purchase Orders

今回入力・確認した主な値は次のとおりです。

項目 今回の実機値
請求書日付 2026-08-16
転記日 2026-08-16
参照 Z091-20260816-01
請求書総額 11,000 JPY
税額 1,000 JPY
税コード V2
購買発注 4500002273
対象明細 10
数量 10 EA
正味金額 10,000 JPY
転記前残高 0 JPY

転記前には残高が0 JPYになっていることを確認しました。ヘッダの総額11,000円に対し、PO参照明細の正味金額10,000円と税額1,000円が対応しています。

MIROで請求書総額11000円と税額1000円、PO 4500002273、残高0を表示したSAP画面
図3:MIRO転記前。総額11,000円、税額1,000円、PO 4500002273を参照し残高0を確認

途中でT169Vのエラーが発生した

MIROのチェック時には、一度、SAPメッセージ(クラス M8/番号 496)「請求書伝票にまだメッセージがあります」が表示されました。照合ログを確認すると、「テーブル T169V に Z091 が登録されていません」が赤エラーとして表示されていました。

今回の検証では、OMR2で会社コードZ091に国内初期税コードV2、予定外配送費用初期税コードV2を設定し、SE16NでT169VにZ091のレコードが保存されたことを確認しました。設定前から開いていたMIROではエラーが残りましたが、新しくMIROを起動するとV2が初期表示され、その後は正常に転記できました。

この挙動差の内部原因までは確認していないため、「セッションのキャッシュが原因」といった推測はしません。ここでは、正常な請求書受領へ到達するために実際に必要だった経緯として記録します。

MIRO後のFI会計伝票を確認する

MIROを転記すると、ロジスティクス請求書伝票5100001623とFI会計伝票5100000000が生成されました。

FI会計伝票の実際の明細は次の3行です。

借貸 勘定 金額
借方 461200 入庫/請求-仮勘定外注 10,000 JPY
借方 148200 仮払消費税 1,000 JPY
貸方 仕入先1002929(統制勘定412100 買掛金 - 国内) 11,000 JPY

SAP Helpでは、GR/IR勘定を在庫勘定と仕入先勘定の間に置かれる中間勘定と説明しています。入庫時には在庫とGR/IRが動き、請求書受領時にはGR/IRに反対方向の転記が行われます。また、税を含む請求書では税勘定への転記も行われます。SAP Help:Important Accounts for Invoice Verification

MIRO後のFI会計伝票5100000000で仕入先債務、GR/IR、仮払消費税の3明細を表示したSAP画面
図4:MIRO後に生成されたFI会計伝票5100000000。GR/IR、仮払消費税、仕入先債務の3明細

総勘定元帳ビュー(General Ledger View)では、3明細とも利益センタZ091TEST02、セグメント1000_Cが確認できました。内部処理はKBS / WRX / VSTでした。

PO履歴で入庫と請求書受領をつなぐ

購買発注4500002273の履歴を確認すると、同じ明細10の下に入庫と請求書受領が並んでいました。

履歴 伝票 数量 金額 日付
入庫(WE) 5000003021 10 EA 10,000 JPY 2026-08-16
請求書受領(RE-L) 5100001623 10 EA 10,000 JPY 2026-08-16

PO履歴側の請求書受領金額は正味10,000円で、MIROヘッダの総額11,000円との差額1,000円は税額です。PO履歴を見ることで、物流側の入庫と請求書受領が同じPO明細に紐づいていることを一画面で追えました。

購買発注4500002273の履歴で入庫と請求書受領が同じ明細に表示されたSAP画面
図5:PO履歴で入庫と請求書受領が同じPO明細に紐づくことを確認

GR/IR勘定でMIGOとMIROを突き合わせる

最後に、G/L勘定461200の明細を確認しました。同じ割当450000227300010に対し、MIGO側とMIRO側で次の2明細が記録されています。

処理 FI会計伝票 GR/IR金額
MIGO 101入庫 5000000000 -10,000 JPY
MIRO 請求書受領 5100000000 +10,000 JPY
対象2明細の合計 0 JPY

MIGOで貸方計上された10,000円と、MIROで借方計上された10,000円が対応し、対象2明細の合計は0になりました。

GR/IR勘定461200の明細でMIGOとMIROの10000円が反対方向に計上され合計0となったSAP画面
図6:GR/IR勘定461200でMIGO側とMIRO側の10,000円が反対方向に計上され、対象合計0を確認

「残高0」と「FIの消込済み」は同じではない

ここは今回の検証で特に注意した点です。画面上では2明細の合計が0になっていますが、消込伝票欄は空欄でした。

SAP HelpのFI-GL説明でも、同じPO・PO明細に関係するGR/IR転記は更新されるものの、オープン明細として自動的に消込されるわけではなく、必要に応じてF.13 / F.13Eの自動消込を使用すると説明されています。SAP Help:GR/IR Clearing Account

そのため、本記事では「MIROによってFI上でも消込済みになった」とはせず、「MIGO側とMIRO側のGR/IR明細が対応し、対象明細の合計残高が0になった」と整理します。

この後、GR/IRの未消込明細をF.13で処理し、消込伝票番号を確認した結果は、GR/IR残高ゼロと未消込の検証で扱っています。

購買サイクル全体で確認できたこと

段階 今回確認した伝票・結果
PO 購買発注4500002273、明細10、10 EA、正味10,000 JPY
MIGO 入出庫伝票5000003021、FI会計伝票5000000000。原材料10,000 / GR/IR 10,000
MIRO 請求書伝票5100001623、FI会計伝票5100000000。GR/IR 10,000 + 仮払消費税1,000 / 仕入先債務11,000
PO履歴 同じPO明細に入庫10 EA / 10,000 JPYと請求書受領10 EA / 10,000 JPYを確認
GR/IR MIGO -10,000 JPYとMIRO +10,000 JPYが対応し、対象2明細の合計0 JPY

一連で見ると、POが後続処理の参照元となり、MIGOでは在庫とGR/IR、MIROではGR/IR・税・仕入先債務が動いていました。GR/IRがMIGOとMIROの間をつなぐことで、物流側の入庫と会計側の仕入先債務を段階的に結び付けていることを実機結果から確認できます。

なお、MIRO後の仕入先債務11,000円はこの時点では未決済です。F110などの支払処理は今回の範囲には含めていません。

まとめ

PO→MIGO→MIROを一連で追うと、単に「発注して入庫し、請求書を登録する」という操作だけでなく、どの段階でどの伝票と仕訳が生まれるのかが見えます。

  • MIGO 101入庫では、入出庫伝票5000003021とFI会計伝票5000000000が生成された
  • 入庫時は原材料10,000円 / GR/IR 10,000円の仕訳になった
  • MIROでは請求書伝票5100001623とFI会計伝票5100000000が生成された
  • 請求書受領時はGR/IR 10,000円、仮払消費税1,000円 / 仕入先債務11,000円の仕訳になった
  • PO履歴では入庫と請求書受領を同じ明細上で追跡できた
  • GR/IRの対象2明細は合計0になったが、FIの消込伝票が自動生成されたわけではなかった

購買サイクルをMMとFIの両方から理解するうえでは、MIGOとMIROを個別に見るだけでなく、PO履歴とGR/IR勘定までつないで確認すると、伝票間の関係を整理しやすくなります。